20160327



大正14年9月28日に起きた「イタリー人狙撃事件」のお話も3回目。
今日はこの事件がいかに世人に注目されたかを物語る二つの事象をお話しましょう。

ひとつめ。
この事件の予審調書が流出しました。
というのは嘘で、そういう体の偽書が出回りました。
題して「罪の日の裁き」。
「偽作リッチ・愛子事件予審調書」『禁書類従 第10集(上)』銀座書館より(以下同)

内容は少女愛子がリッチにいかに手込めにされたか、という告白を装ったエロ本で、調書風に手書きになっていたりなかなか手が込んでいます。



そうかと思うと、御丁寧に春画風の絵がついていたりして、よくわからない出来になっています。



これがどれほどの信憑性を持って受け止められていたかはわかりませんが、少女と大人というだけでなく日本人女性と外国人という組合せが、暗い興味をそそったのでしょう。
当時のこの事件の消費の方向が透けて見える気がします。


そしてふたつめとしては、なんと事件が映画化されました。
タイトルは「踊り子の指輪」。


大正14年10月23日付読売新聞。右が「踊り子の指輪」のスチール。

島津保次郎監督、吉田百助脚本、桑原昴撮影、松竹蒲田で大正14年10月に封切られました。
出演は英百合子、筑波雪子、松井千枝子、林千蔵、秋田伸一、河村藜吉、武田春郎など。
こちらのサイトの一番下にもスチールが出ています。
が、残念ながらどこに保管されているか不明で現在観ることは叶わないようです。

0 件のコメント:

コメントを投稿